風景と速度

@takusan_neyoの日記

7月

泥酔。そこに未来はない。過去もなくただこの時間だけが確かに感じられる。セミかどうかわからない虫の鳴き声が聞こえる。美しい夢はやがてなくなる。捉えようのない現在だけがわたしの胸を締め付けながら、しかし生きる実感は確かにそこにある。

黎明。白髪の男が空き缶を集めて自転車に積んでいく。わたしはその横を通り過ぎる。男とわたしの人生が一瞬重なって、遠ざかっていく。

ここまで書いて、酔っ払って寝た。

夢の中で、昔すきだったひとが出てきた。朝、へんな汗を拭いながら、そのひとのことを思い出していた。

高校生の頃、わたしはバンドをやっていて、当時出入りしていたライブハウスで他校のひとたちと知り合い、mixiで繋がり……という流れについて、ある種の心地よさと悪さの併存した形で受け入れていた。

そのひとも、そういう流れで出会ったひとだった。力強い歌声と、透き通るような声を持ったひとで、わたしはとても惹かれていたけれど、何か行動に移すことはしなかった。それは、彼女が、別のバンドマンに惚れているのがはたからみてもわかったからだ。

結局、その人への思慕は諦めて、心のうちにしまったまま数ヶ月くすぶって、次の恋へとうつったのだとおもう。

わたしはひとを好きになるときによく思うことは、その人をひとりじめしたいということではなく、その人そのものになりたい、ということだ。すてきなひとに対しての憧れは、強い光となり、わたしの現状に影を落とす。憧れは強くなるほど、自分とのコントラストにくらくらしてしまう。自己否定の気持ちはどんどん捻れまくって、わたし自身がそのひとであったらいいのに、という焦燥を生み出す。

七夕だけれど特にすることもなく生活はつづく。おいしいと評判の近所の定食屋さんでヒレカツ定食を食べた。しつこくなくておいしかった。いまのわたしにとくに願い事はないけれど、わたしのすきなひとたちやすきだったひとたちの願い事がわたしの知らないところで叶っていたらいいなとおもう。